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「いま、ここ」の差別問題を考える! (第1号より)

「いま、ここ」の差別問題を考える! (第1号より)

-広島真相報告集会への結集呼びかけ-

呼びかけ人代表 森島 吉美 (広島修道大学教授)



 今、一つの解放運動が岐路に立っている。天から降ってくる解放理論(「マル学同」「革共同」)と地から噴出してくる解放理論(全国連)がぶつかり火花を散らしている。被差別当事者を、その運動理論の実践のために、単なる「兵隊」とおとしめる天の理論と、被差別当事者一人ひとりが自分の意志で人間解放に向かって動く地の理論が正面からぶつかっている。この衝突は、一見、内部抗争のように見えるが、こと差別問題に関する限り、単なる理論的衝突では済まされない。

 天の理論の指導者は、部落差別問題、障害者差別問題といった個別的差別問題への関心より、抽象的、一般的、もっと言えば誇大妄想的革命理論に関心を持つ。「部落差別問題は部落民に任せておけばいい」、「確認糾弾会は人の全人格を否定する」、被差別当事者の個々の特定の活動に対して、「物取り主義」といった発言を平気でする。それも被差別当事者を目の前にして。

 かつて、島根県の西部のT町の被差別部落を訪れたとき、そこの年老いた一人のおばあちゃんが、「先生、差別、差別と声を上げるのだけは止めてくれ、我々は、差別はじっと耐えることと決めました、誰にも何も要求はせん」と話していたのを思い出す。「我々が我慢さえすれば、自分の子や孫が、われわれが受けたほどの差別は受けん、そのためには差別を甘んじて受けること、抵抗はせんと決めました」「我々が死んだらこの部落に住む人はもういなくなる。誰も住む人がいなくなったら、この部落は自然消滅する。そう、晴れて部落がなくなる。そうなれば、自分の子や孫は差別を受けなくて済む、その日が早く来んかと、死ぬ日を今日か、明日かと待っている」

 天の理論の教えは、被差別者をして、正にこのおばあちゃんが置かれている状況に追い込むことを明言しているに等しい。

 差別問題へのかかわりとは、それとは逆に、このおばあちゃんの「声なき声」を天に届けと大きくしていくことである。

 今回、具体的に、反差別の声を封じられたのは、ようやくにして自分の足で反差別に立ち上がったばかりの一人の女子学生であった。それも、それまで一緒に解放運動を闘ってきた学生仲間から。
彼女の怒りは、当然、その仲間に向けられる。しかしこの怒りは、差別野放し状態の中に放り込まれ、声も上げられず、住む場所を追われ、自分が生きていく希望さへ奪われた被差別当事者の「声なき声」を代弁している。

 天の理論に特徴的なのは、例えば、被差別部落の人々、障害者一人ひとりの顔を見ようとしないところにある。被差別当事者の一人ひとりの声に耳を貸さない。「部落の人間、障害者、労働者等」と十把ひとからげに一つの言葉にくるんでしまう。差別との闘いは、被差別当事者の一人ひとりの顔を見、一人ひとりの声に耳を貸すことから始まる。

 今日、力あるものに立ち向かう人々がどんどん孤立させられてきている。彼らの声がますます小さくなってきている。

 独りになり、上げる声さへ失った人々に目を向け、耳を貸す、このことこそ解放運動の原点である。

 「今、ここ」で差別と具体的に向き合って闘い続けている解放運動の仲間の皆様に、全国連広島支部、そして先の女子学生のこれからのあらたな闘いに、思いを共有することを熱く訴えます。彼らを孤立させないために、反差別運動の芽を絶やさないために!